理系高校生の中でも「化学」に苦しんでいる人は多いのではないでしょうか。
高校の化学の授業で挫折して、理系として絶望感を感じている高校生は少なくないと思います。
でも大丈夫、きちんと正しい学習法でやれば着実に点数を伸ばして、入試の得点源とすることができます!
この記事では「化学が苦手な人が、受験でも化学が使えるくらいになるための自学用参考書」を、オススメする理由と学習方法と併せて丁寧に解説していきます。
とても長い記事になっているので、下の目次から苦手な「単元」をクリックして読んでいくのもOKです。
全般が苦手な人は、大変かもですが最初から読んでみてくださいね。それではよろしくお願いします。
筆者プロフィール
東北大学理学部卒業・大学院修了後は公立高校で理科の教諭。教諭時代は主に生物と化学を指導。進学校での指導経験が長く、化学が苦手な生徒のマンツーマン指導にも力を入れており、難しい化学をわかりやすく教えるのが得意。モルはかつては宿敵、今は友達。教員後は塾講師として数学・理科4科目を指導。
独学でも大丈夫?
よく「化学は難しいので独学は厳しい」という声を聴きます。
学校の授業をきいてわからないんだから自力じゃムリ、というあきらめの声ですね。
結論から言います。
独学でも大丈夫です!
いま高校で理科教員をやっている私も、高校時代の化学はほぼすべて独学しました!
化学は科目の性質上、むしろ独学で取り返しやすい科目です。
物理と比べれば、まだまだ独学での余地があります。
分からないところまで戻って、今すぐにでも学習をはじめましょう!
学習が進んで知識がたまってくると、授業についていけるようになったり、模試の解説を読んで意味を理解したりできるようになりますよ。
この記事を書いている人
私はいまでこそ生物学を専門としながら化学にもある程度精通していますし、それを子どもたちに教える仕事をしています。
1年生の化学ですでにmol(モル)でついていけなくなり、2年生になって化学の授業が全く分からなくなってしまいました。
モルがわかっていないので2年生の化学とか絶対理解不可能です。
高校三年の夏前までは模試で50点を超えることはなく、全国偏差値は50前後をうろうろしていました。
しかし理系としてこれではいかんと奮起して、高三の夏に化学を独学で猛勉強はじめました。
詳しい勉強法はここでは割愛しますが、夏休みおわりの模試では、偏差値が20近く上がりました。
偏差値が上がってからは、授業を聞いて理解するのも余裕になりました。スルスル内容が理解できました。結局、授業を理解するための下地が不足していたんですね。
その後は順調に模試の点数も伸び、センター試験では88点でフィニッシュ。
高校時代に化学が苦手だった私が、いまでは高校生相手に化学を教えているというにも不思議なものです。
でもそんな私だから断言できます。
「化学は独学で成績をアップできる!」と。
ぜひこの記事を読んで学習法を身に着けて、今日から学習をはじめましょう!
そもそも化学が苦手になる原因
化学を難しいと感じる人は、基礎事項にムラや穴があるのが原因です。かつての私もそうでした。
化学の問題は、「化学の用語」をもとに構成されます。
そして「化学の当たりまえ」、つまり化学の世界の常識を前提として問題が進行します。
例えば炭素は1モルあつまると12gだよとかそういうことです。
1モルってなに?っていう人は、「1モルってこういうものだよ」という化学の常識を知らないから、ついていけなくなってしまうんです。
そんな当たり前がわからない状態では、問題をみてもちんぷんかんぷんですし、授業すらもついていけません。
コンビニで万引きをしてはいけないという「社会の常識」が分からない人は社会で生きていけませんよね?
「化学の常識」が分からないと、化学の問題は決して解けません。
逆に言えばそういった「お約束」を一つひとつ理解して身に着けていくことで、授業や問題集をサクサクできるようになるわけです。
そんな基礎事項から学べる、わかりやすくて内容もしっかりとしたオススメ参考書は以下の5つです。
化学の3分野 無機化学・理論化学・有機化学とは?
参考書の紹介に移る前に、化学の3分野についてお話しておきます。
化学の3分野とは ①無機化学 ②理論化学 ③有機化学
化学の教科書に登場する項目を、3つにジャンル分けしたものですね。
厳密に誰かが定義した(取り決めた)線引きがあるわけではありませんが、化学の勉強法はそれぞれのジャンル別に異なりますので、ここではこの3つの区分に分けて参考書を紹介することにします。
以下でそれぞれについて簡単に説明しておきます。
無機化学
無機化学とは、周期表に登場する元素について学ぶ化学の1分野で、各元素の性質や化合物の性質について扱います。
例えば皆さんが 「水兵リーベ僕の船…」などと覚えた原子番号順の元素についてや、周期表を縦読みして性質を理解する「1族元素」「アルカリ金属元素」「ハロゲン」「希ガス」といった項目などもここに入ります。
また、それらを理解するためにイオンのでき方、化学結合、結晶構造、酸と塩基の基礎事項もここに含まれます。
覚えるべき知識が莫大であるという特徴があります。
理論化学
いわゆる化学の計算分野になります。立式が伴うものはここに多くが含まれます。
例えば化学の関所「モル(mol)」や、酸と塩基の中和(中和滴定)、pHの計算、酸化還元反応、電池、電気分解、反応熱(ヘスの法則)、溶解度、反応速度、化学平衡などがここに含まれます。
多くの「化学嫌い」を生んだこれらの項目ですが、その源流に走っているのはモル計算です。
モルの概念や計算の基礎がわかっていれば、努力次第でできるようになる単元です。
有機化学
有機物を扱う化学分野です。大きく分けて炭化水素と芳香族化合物、高分子化合物に分けられます。
上記二つの分野と少し毛色の違う分野で、無機化学と理論化学が苦手でもここだけはできるという人がいたりします。
というのも、この分野は基礎になっている事項が他とは独立していて、パズル的に考えていけば意外といけてしまうという特徴があるからです。
モル計算ができなくても、炭素鎖の基本と官能基を覚えてしまえばレゴブロックを作るようにカチカチと組み立てて化合物をイメージすることができます。
逆に言えば全く新しい知識を導入していく必要がありますから、そこでつまづくと理解が遅れていく傾向があります。
無機化学をまなべる参考書
無機化学はとにかく覚えることが多く、「酸化物」や「塩化物」という言葉を聞くだけでもウェェとなってしまう人がいるかもしれません。
とにかくこの分野では、化学の言葉を覚えることが大切です。
つまりすべて暗記しようということです。
英語の勉強をするときにまずアルファベットを習い、単語を覚え、構文を覚えていくように、無機化学を学ぶときには、元素記号を覚え、物質の化学式を覚え、それらの性質を理解していくことが大切なのです。
ということでこの分野の内容は、英語の単語帳のように暗記ブックを使うのがオススメです。
この暗記帳のいいところは元素や項目別にわかりやすく分類分けされていて、虫食いが程よく多く暗記にうってつけです。赤シートで隠して使えるのもGOODです。
Kindle版もあるのでスマホで電子書籍として読むこともできます。
ハンドブックサイズで携帯性もよく、電車の中でも使いやすいです。そして情報量がうまくコントロールされていて、見やすいレイアウトになっています。
さらに、他の暗記帳ではあまり見られない反応式の虫食いがあります。
化学反応式の左辺だけが与えられていて、右辺が赤文字になっているので赤シートで隠して使えます。
とにかく化学の用語と化学反応式になれることが一番大切なので、これにかじりついてしっかりと頭に叩き込むことで上達することが無機化学攻略の最短距離になります。
いろいろと暗記ブック系を比べてみましたが、これが一番ですね。
理論化学を学べる参考書
理論化学は立式と計算分野です。
無機化学の知識を応用する場面も多いので、無機化学をある程度理解してから対策する必要があります。
この分野の多くの問題を解く手順は以下の3段階です。
理論化学の解法3ステップ
- 問題(実験構造)の理解
- 起きてい折る現象を化学反応式として立式
- 化学反応式から計算をする
このうち1と2が難しく、多くの高校生を苦しませています。
理論化学は計算分野なので、「自分は計算力がないんだ」と思ってしまう高校生が多いですが、実はつまづいているのは1,2の計算の前段階ということが圧倒的に多いです。
つまり問題文で言っている意味が分からない、問題になっている実験で何をしているかがわからない、そもそも式として何を書けばいいかわからない、ということです。
思い当たる節があるのではないでしょうか?
問題集や模試の解説を読んでも理解できません!という人はこのタイプになります。
実は1,2ができてしまえば、3は基礎的なモル計算ができれば答えに行きつくことができます。
なので、ここでは1,2に関する基礎を学ぶことができる参考書を2冊オススメします。
この2冊はどちらもGAKKENの橋爪健作先生著の本ですが、この先生の本はイラストや模式図が非常にわかりやすく書かれていて、全体として「わからない人の気持ちがわかっている人」の本です。
化学の参考書は「わからない人の気持ちがわからない人」が書いていることが多いので、用語やら仕組みをわかりやすく解説しているものが少ないです。
(実は高校教師も多くは学生時代から化学が得意なので、「化学が苦手な人の気持ちがわからない」傾向が強いです笑)
その点この本は、色分け・レイアウト・情報量のバランスが非常にいいです。ぜひ一度本屋で手に取ってもらいたいです。
なぜ2冊紹介したかというと、状況に応じて使い分けてもらいたいからです。
まず基本的に使う頻度が高いのはこちらです。
105ページしかない非常に薄手の参考書で、タイトルの通り取り上げられている問題数は25と、かなり精選されています。
この本は「問題をどのように解いていくか」に注力した本です。
理論化学の解法3ステップ
- 問題(実験構造)の理解
- 起きてい折る現象を化学反応式として立式
- 化学反応式から計算をする
先ほど紹介した3つの手順のうち、2がわかるようになるための本です。
問題の全体像を解説して、その上でどうやって式を立てればいいか、なぜそういう式になるかを丁寧に解説してくれています。
なので、これをやるだけでも十分に立式についての基礎力を身に着けることができます。
しかも薄いので「やりきるモチベーション」を高くすることができます。
化学の参考書は無駄に厚いものが多いので、学習者のやる気を損なうものが多いです。数学のチャート式もそうですが、情報量は十分だとしても継続できなければ、苦手な人が手を出していい参考書とはいえません。
化学が苦手な人は薄い参考書を選んで、まずはそれをやりきる。それが一番大切です。
話がそれてしまいましたが、この参考書はそういった点でも優れています。
しかし、3段階のうち1でつまづいている人、つまり「問題の言っている意味が分からない人」には、さらに優しい参考書が必要です。
この参考書自体も十分に解説はしてくれていますが、それを読んでもやはり納得がいかなかったり、理解しきれない場合には、こちらを使います。
こちらは理論化学25題よりも厚みがあり、300ページ近くあります。ちょうど化学の教科書より少し厚いくらいです。
とても分かりやすい本ですが、やはりこの厚みと情報量は学習者の心を折ります。
なので、こちらの参考書は「調べる用」に使ってください。
つまり、基本的には理論化学25題に取り組み、その問題について理解ができない場合、その項目について調べるときに使います。
理論化学25題よりも、さらに基礎的な部分からわかりやすく解説してくれています。
イラストもふんだんでシンプルな構成になっています。というか余白が多いせいでこの本が厚くなっているせいもあります。
ページをめくってみればわかりますが、教科書などよりスカスカです。
ですが苦手な人にはそれくらいがちょうどいいのです。
問題を解く前に、その問題について取り上げられているページをこの「ゼロからわかる」から探して、一読してからやるとさらに理解が深まるでしょう。
同じ人が書いているので、連携もよくなっています。
何度も言いますが、決してこれを1ページ目から読もうとしないでください。
必ず挫折します。本を買うとそのすべてを読まないといけないとするのは、私たちの悪い癖です。
辞書の全ページを読もうとしないのと同じように、この本も調べ学習用として割り切って使いましょう。
いろいろな問題にチャレンジして、その度に調べていくうちに結果的にほぼすべてのページを読み切ることになります。
それがこの本の正しい使い方です。
色々と参考書を比べた結果、この2冊の組み合わせが一番わかりやすいです。
ぜひ苦手な人はこの2冊を使って基礎事項をやりきることを目指してみてください。
有機化学を学べる参考書
有機化学は、化学物質の名称や作り方、分離法など幅広い知識が必要な単元です。
しかし基本的には官能基(-OHとか-COOHとか)によって性質が決定しますし、どのように化学反応をするのかも官能基によって想定ができるので、パズル的な要素が多い単元といえます。
なので、理論化学や無機化学が苦手でも有機化学は好き、という人が一定数います。
パズルの要素やルールの部分を理解できてしまえば、点数がそこそことれるようになっていくからですね。
つまり、有機化学ができるようになるためには、「知識」と「理屈」の2つをバランスよく習得していけばOKということです。
まず知識をつけていくためには単純暗記が、地味ですが効果があります。そこでこちらの「入試に出る 有機化学の要点」がおすすめです。
炭素の数によって物質の名前が法則的に変わる。
物質の構造によって、名前が法則的に変わる。
つく官能基の種類によって、物質のグループが決まる。
こういった基本的な命名ルールが頭に入っているだけで、有機化学への嫌悪感(アレルギーともいえます)がだいぶ軽減します。
物質名がたくさん出てくる単元なのでげんなりしてしまう人もいるのですが、きちんとグループ分けを学んでいくと、とても合理的にかつ効率良い命名をしているんだなぁということに気付かされます。
最初覚えるまでがちょっと大変ですが、こういったハンドブック形式の暗記帳を使って、通学や休み時間などのスキマ時間をうまく活用して学習してみてください。
Kindle版もあるのでスマホで電子書籍として読むこともできます。
最初はわからなくても「さーっとやってまた戻る」を繰り返していくうちに、少しずつ知識のタネが育っていきます。
知識のタネが育ってくれば授業の意味も分かってきますし、問題集にも取り組めるようにもなりますから、ぜひ暗記帳頑張ってみてください。
また知識と一緒に理屈も一緒に学ぶことが大切です。
その際にとても参考になるのがこちらの本です。
「そもそもどういう理屈で化学反応してるの?」
「なんでこれとこれが反応するとこれができるの?」
「なんでこの操作をすると◎◎が存在するってわかるの?」
有機化学の単元が苦手な人の多くがこういった疑問を持つ思います。
実はこれは有機化学の理屈にのっとったパズル的な思考が必要で、全部まる暗記するのではなくて、この「なぜ?どうして?」を1つ1つ解消していくことが重要です。
入試問題だと、「聞いたことがない物質」や「名前を伏せた状態の物質」が出題されることがあります。
そういった場合でも焦らず化学反応を読み解くには、「官能基や物質の構造から物質の性質を推理する」ことが重要です。
まる暗記で対策しているとこの解き方ができないので、何もできないまま終わってしまうということになります。
しかし官能基や物質の構造をもとに理屈を学んでいる人であれば、そういった入試問題はもちろん、日常学習レベルの問題でも「少ない暗記量」で問題を解くことができるようになります。急がば回れ、ということですね。
前置きが長くなりましたが、この「宇宙一わかりやすい高校化学(有機化学)」は、その名の通り最高に丁寧に噛み砕いた説明がウリの参考書です。
本当に化学が苦手な人のために作られた、というがよく分かります。難しい用語や言い回しを排除して、有機化学の根本の理屈をわかりやすく解説してくれます。挿絵もかわいくて親近感がもてます。
こういった「解説系」の参考書はいろいろありますが、その中でも一番わかりやすいです。本屋で実際に見比べてほしいですが、わかりやすさで選ぶと結局これに行き着くと思います。
化学の勉強をあきらめてはいけない!いまから再スタートだ!
さてとても長い記事になってしまいましたが、ここまでお読みいただきましてありがとうございます。
「化学がわからない」というセリフを教師になってから何十回、下手したら何百回と生徒たちから聞いてきました。
私自身は生物が専門の教師なので化学を教える機会は少ないのですが、化学を教えるときには「苦手な人がわかるように」を心がけて授業をします。
高校の先生って、学生時代からその科目が得意だった人が多いので、どうしても苦手な人の気持ちに立って授業するのが苦手な人種でもあります。
「わからないことがわからない」っていう状態ですね。
質問しにいっても「なんでこれがわからないの?」という顔をされたことがある人、多いんじゃないでしょうか笑
私は高校時代に化学が苦手だったので、化学の苦手な人の気持ちがわかります。
私自身、高校時代の化学の先生に教わりにいくのは怖くていけませんでした。
それが理由で自学をはじめたというのもあります。結果としては、自学をすることで能動的に(自発的に)学習するモチベーションが上がって、理解が深まったということもあります。
苦手な人はぜひそれを克服するために、自学を頑張ってみてほしいと思います。
もちろん身近に教えてくれる先生や友人がいれば、ぜひ頼りながらです。
一人で勉強は心細いですし、途中でやめてしまうことも多くなります。
皆さんの受験や学力アップがうまくいくことを願って、この記事の締めとしたいとおもいます。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!